第一話〜糀のお話

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●麹とは?
発酵食品を語る上で必要不可欠なのが「麹」の存在です。
麹菌はカビの一種で正式には「ニホンコウジカビ」と呼ばれ、2006年に日本醸造協会によって国菌に指定されました。
カビといっても、人に害がないどころか、とても有益なものを作ってくれる発酵微生物が麹菌です。
麹は米や麦、豆などの原料を蒸したものに麹菌を生やして培養したもので、発酵食品を作る上で欠かせない微生物です。

●麹の歴史
日本では、弥生時代に米作りと共にに餅麹が伝わったという説や、古墳時代に麹を使った酒造りが行われていたという説があります。
有力な説として、麹は古くは紀元前から用いられていたとされ、中国から日本に伝わってきたと言われています。
中国では発酵に使う麹菌は「クモノスカビ」が主流です。
粉にした米や麦などの穀物に水を加え練って固め、蒸さずにそのまま放置することで、クモノスカビをはじめとする様々な種類の微生物が繁殖し、「餅麹」が出来上がります。
一方、日本では米を一度蒸してから麹菌を繁殖させるという方法が一般的です。
発酵調味料の記述は日本最古の歴史書「古事記」や「日本書紀」に記されているのですが、かなり古くから発酵食が日本に根付く土壌があったことが分かります。
麹については、今から約1300年前の書物である「播磨国風土記」麹についての記述があり、日本で麹が使用された起源として最も有力とされています。
いずれにしても、今より遥か昔からすでに麹の活用法に気付いた先人たちには驚かされますね。

●美容と健康
麹菌は、タンパク質をアミノ酸に分解するプロテアーゼや、デンプンを糖に分解するアミラーゼ、脂質を分解するリパーゼなど、多くの酵素を生成します。
その酵素の働きによって、食材をやわらかくしたり、発酵食品の旨みや甘味を引き出したりします。
また、麹に含まれている酵素は、消化や吸収を促進したり、腸の善玉菌を増やしたりして腸内環境を整えてくれる働きがあります。
腸は美容と健康の鍵を握る臓器、腸の働きが活性化することにより、肥満防止や美肌作り、免疫力アップといった、体まるごとのアンチエイジング効果が期待できます。

●和食と麹
2013年ユネスコの無形文化遺産に「和食」が登録されました。
登録決定の理由の一つに、和食は自然を尊重する日本人の心を表現したものであり、伝統的な社会慣習として、世代を越えて受け継がれていることがあげられました。
その和食の根底にある、日本酒・醤油・味噌・みりんなどは、いずれも麹の働きにより醸された発酵調味料であり、世界遺産にも認定された和食の旨みの源と言えます。

●麹と糀
米にコウジカビが繁殖するとまるで花が咲いたように見えることから「糀」という国字が生まれました。
「麹」と「糀」、明確に意図が定められているわけではないため、どちらを使っても間違いではありません。 ただ、一般的に「麹」と書くと麦・豆・米など穀物でつくられた“こうじ全般”のことを表し、「糀」と書くと‟米こうじ“のことを表していることが多いようです。
もちろん花小路では米に花の『糀』を使いたいところです。
ちなみに花小路で使用している糀は岩手県「麹屋もとみや」の麹と茨城県産新種米「にじのきらめき」を原料にしています。